子宮内避妊器具(ミレーナ)
ピルよりも高い避妊効果があって、血栓の危険性がないためピルが使えなかった方でも可能です。ピルとは違い、飲み忘れる心配がなく、避妊効果が5年間持続します。また、生理痛や生理不順などの治療にも有効です。
ミレーナとは

一般的にはリングと呼ばれている子宮内避妊器具で、子宮内に入れることで避妊効果を発揮します。32mm程度の大きさでやわらかいプラスチックでできています。形はT字に似ていて、縦に長い部分に黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が付与されています。子宮内に挿入されたミレーナは子宮内に適切な量の黄体ホルモンを約5年間供給し続けるため、高い避妊効果が5年間続きます。現在のあらゆる避妊法の中で、費用対効果が最も高く、飲み忘れて避妊に失敗することもありません。また、ピルと異なり卵胞ホルモンが含まれていないため、血栓を起こすリスクもありませんから、高リスクでピルの処方が難しかった方でも利用が可能です。
2007年の登場からしばらくは避妊目的のみで利用されていましたが、生理痛や出血量が多いなど生理トラブルの改善にも有効であることが認められ、2014年に月経困難症や過多月経の治療に関して保険適用されるようになっています。
なお、妊娠を希望される場合には、ミレーナを取り出すことで妊娠可能な状態に戻ります。
こんな方にミレーナをおすすめします
- 経膣分娩の経験がある
- 今後の長い期間、妊娠を希望していない
- 次の出産までに十分に期間を持ちたい
- ピルは飲み忘れをしそうで不安
- 肥満・血圧・脂質・喫煙・年齢などでピルを断念した
- 血栓が心配
- 重い生理痛があるなど月経困難症
- 経血量が多い過多月経
- など
ミレーナの費用
避妊目的の場合には保険適用されないため、全額自費診療となります。
なお、月経困難症や過多月経の治療として行う場合には、保険が適用されます。
ミレーナの挿入時期
ミレーナの挿入に適した時期は、生理がはじまった日から7日以内のタイミングです。経血量が落ち着く4~6日目の挿入を当院では推奨しています。
産後は子宮の回復を待ってからの挿入となりますので、個人差はありますが産後3~4か月後を目安にお考えいただいています。なお、妊娠初期の流産や初期人工妊娠中絶の場合はその直後の挿入も可能とされていますが、当院ではその後、最初の生理がはじまってから7日以内のタイミングでの挿入を行っています。
ミレーナの挿入は特に問題がない場合は約5分が目安です。
挿入後の注意点
当日はバスタブにつかる入浴は避け、軽いシャワー程度にとどめてください。
処方された3日分の抗生物質は医師の指示通りにしっかり飲みきってください。
ミレーナの効果
付与された黄体ホルモンが持続的に放出され、それが子宮内膜などに作用して高い避妊を得ることができ、月経困難症や過多月経の症状緩和に役立ちます。また内服するピルと違い、ホルモンの影響が子宮周辺に限定されるため、起こる可能性のある副作用も少なくなっています。また血栓になるリスクもありません。
1.避妊効果
排卵後しばらくは子宮内膜が分厚くフカフカした状態を保ち、いつ受精卵が来てもいいように準備します。受精卵が着床をせずに妊娠が成立しないと、子宮内膜は剥がれ落ちて生理になります。ミレーナ導入によって十分な量の黄体ホルモンが子宮に供給され、子宮内膜の増殖を抑制し、子宮内膜が薄くなることで妊娠を防ぎます。また、子宮の入口である頚管の粘液を変化させて精子が子宮内へ侵入することを防ぎます。この効果は5年間続きます。
2.過多月経・月経困難症の症状緩和
持続的に放出される黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を抑えることで生理痛などの症状を緩和し、子宮内膜が薄くなることで出血量自体も減少するため、月経困難症や過多月経の治療にも使われます。
3.更年期障害の症状緩和にも有効
更年期障害は女性ホルモンの分泌量が大きくゆらぎながら低下することで起こります。ミレーナは黄体ホルモンが付与されているため、プレ更年期や更年期障害の不調があった場合、不足している卵胞ホルモンのエストロゲンジェルのみを使用することで効果が期待できます。
ミレーナのメリット
5年間という長い効果持続期間

1回挿入するだけで、適切な量の黄体ホルモンを放出し続けて避妊効果が5年間持続することが大きなメリットです。服用忘れや、服用したかどうか覚えていないといったことがないため、安心できます。また、継続的に避妊効果を得たい場合には5年ごとに入れ替えることができます。途中で取り出すことで妊娠可能な状態に戻りますので、避妊をほぼ完全にコントロールできます。
コストパフォーマンス
低用量ピルを5年間服用する場合と比べると、ミレーナは定期健診までを含めてもトータルの費用対効果が高い方法です。コンドームなどと比べてもコストパフォーマンスが高く、しかもほぼ100%に近い避妊効果を得られます。
ピルは服用できない場合も可能
ピルには卵胞ホルモンが含まれているため、まれに血栓症を起こす可能性があり、リスクの高い方には処方できません。40歳以上、1日15本以上喫煙している、高血圧や脂質異常症(高脂血症)、BMI30以上の肥満など、血栓リスクが高い場合にはピルの処方が受けられず、それに近い場合には慎重な処方や疑わしい前兆があった場合には服用を即座に中断する必要があります。そうした方でも安心してミレーナをお使いいただけます。
また、黄体ホルモンの影響は子宮周辺だけにとどまるため、起こる可能性のある副作用も少なくなっています。
ミレーナの副作用
子宮内の黄体ホルモン量が増えるため、その状態になれるまでの期間には副作用を起こすことがあります。特に挿入後、数日間は副作用が起こりやすくなっています。症状が長く続く、または痛みなどが強い場合には早めに受診してください。
- 下腹痛
- 不正出血
- 月経周期の変化
- 過長月経(月経が8日以上と長引く)
- 腰痛
定期検診について

ミレーナを入れて約1か月後に超音波検査による検診を行って正しい位置にあるかを確認します。その後は3か月から半年経過した段階で検診を受け、安定しているようでしたら、それからは1年に1度の検診頻度で大丈夫です。ミレーナはまれに脱出やズレを起こすことがあり、正しく装着されていないと十分な効果を得られないことがあります。また、思わぬケガにつながることも考えられますので、必ず定期検診を受けるようにしてください。
ミレーナとピルの違い
ミレーナ
- 子宮やその周辺の狭い範囲にのみ薬の効果がある
- 卵巣の働きは変わらないため、排卵は起こる
- 喫煙や基礎疾患、内服している薬、肥満などに影響されずに安心して利用できる
- 不正出血以外の副作用が起こる可能性が低い
- 1回の挿入で5年間効果が持続する
- 飲み忘れなどがない
ピル
- 体全体に薬が効いてしまう
- 卵巣で排卵が起こらなくなる
- 喫煙や基礎疾患、内服している薬、肥満、年齢などにより処方できないことがある
1~2年など短い期間の避妊をお考えの場合にはピルが向いています。5年程度の避妊をお考えでしたらミレーナが適しています。また、出産経験の有無や血栓の疾患リスク、副作用の出方などによっても適した方法が変わってきます。どちらにしようか迷う、またはご自分に合う避妊法を検討したい場合には、お気軽にいらしてください。